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第84話 てんぷら
【カテゴリ:微妙な付き合い 】   



手を振っている花子さんを見つけましてね。

そこに急いだ僕です。

その日の花子さんは、一言で言えば、お嬢様っぽい服を着ておりました。

服を説明するのが苦手なので、何と書いていいのか良くわかりませんが、スカートにブラウス、そして、上に羽織るものを着ておりまして。

その着ているもの、なんだか雰囲気が違うんです。

花子さんが特別に派手な服装をしているわけでもないのですが、やっぱり違う感じがします。

周りを歩いているのは、その日のイベント帰りの皆様。

なので、ほとんどがビジネススタイルです。

女性は、スカートか、ズボンかの違いはあれど、やっぱり仕事用という感じの服装でしたから、

それと比較して、花子さんは、とても華やかな感じがしたのだと思います。

少なくとも僕には、違って見えておりました。

で、そんな花子さんの前に立って、久しぶりに顔を見ました。

電話やメール、手紙では話をしていましたが、会うのは、5ヶ月ぶりくらい。

僕の地元で冬に会って羊を見に行ったりしたとき以来です。

そのときと、服装以外は変わらない花子さんでした。

でも、そんな花子さんに向かって僕が一番最初にしたのは、頭を下げること…。

僕 「お待たせしてしまいまして、すみません」

と、電話でも言ったことを繰り返していました。

花子さん 「また謝って…。小太郎さん、そんなに気を使わないでくださいね」

僕 「でも、かなりお待たせしてしまいましたので」

花子さん 「お仕事ですから、それは当然です。今日は小太郎さんの大事な日なのですから」

僕 「そう、でしょうか…」

花子さん 「お仕事、お疲れ様です」

そういって、花子さんは、ニッコリ笑いました。

花子さんはこのときもそうですし、その前からずっと、僕が補助金でやっていることをしっかりと”仕事”だと言ってくれました。

この時期、僕自身ですらも、補助金の仕事は、ちゃんとした仕事とはあまり認識してなかったんですね。

やってること自体は仕事と言ってもいいのかもしれませんが、

就職へのステップという意味合いでしたし、補助金をもらえる期限も決まっていましたので、

入ってくるお金も不安定ですから、僕の中では、財政的にはちょっとした臨時収入のように認識していました。

ですから、それを何の疑いも無く、ずっと”仕事”と言ってくれたことは、すごく嬉しかったです。

ただ、僕自身がそう思っていない部分もありましたから、ちょっと違和感もありまして、なんだか彼女をだましているような気がしたりもしていました。

このあたりは、多少花子さんとの認識の違いがあったと思います。

僕がちゃんと説明してないのが一番大きな原因ではありましたが…。


花子さん 「小太郎さん、お昼ご飯はどうされましたか?」

一番最初に聞かれたのは、やっぱり、ご飯の話なのでした。

僕 「それは、まだ食べて無かったです」

花子さん 「やっぱり、お忙しかったのですね」

僕 「はい。空き時間が無かったものでして…」

花子さん 「では、晩御飯、早く食べたほうが良いですか?」

僕 「あ、いえ、気にしなくても大丈夫です。なんだか、緊張してしまって、食欲も無かったものですから、そんなにお腹はすいてないんです」

花子さん 「そうなんですか…。あんなに広いところですから、きっとすごくドキドキされたのですね」

と、なんだか、僕が会場を全部使ってすごいことをしていたかのような感じで言っておりましてね。

微妙に勘違いしているような気もしないでもなかったのですが…。

花子さん 「新橋のてんぷら屋さんを予約してあるのですが、それで大丈夫でしょうか?着くまで時間がかかってしまいますし、お腹がすいているようでしたら、別のところにしましょうか? それに、もし食欲が無いのでしたら、てんぷらみたいな油物は逆につらいでしょうか?」

なんて、かなり気遣ってくれたんですが、僕として一番嬉しかったのは、てんぷらについて覚えていてくれたこと。

僕 「てんぷらって…。あのときに電話で言ったこと、覚えてくれてたんですか?」

てんぷらの話は、かなり前に電話で、イベントのことを話したときに、出てきた話題でしてね(こちら)。

僕は覚えていたのですが、花子さんは食べ物も色々と知っているし、忘れてるだろうなぁと思っていたのでした。

ですが、

花子さん 「はい。私、食べ物のことだけは忘れないですから」

と、苦笑しながら言っておりましてね。

花子さん 「でも、小太郎さんの今のご気分で変えても大丈夫ですよ。ここの近くにもレストランはあるみたいですから、すぐに食べるならそれでもいいと思って来ましたから」

僕 「いいえ、大丈夫です。てんぷら、楽しみです」

花子さん 「そうですか?」

僕 「はい。とても。じゃあ、行きましょうか?」

花子さん 「はい」

ということで、二人でゆりかもめに乗ったのでした。





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【2008/08/18 08:44】 | 微妙な付き合い | トラックバック(0) | コメント(4) | page top↑
<<金メダルの持ち帰り方 | ホーム | ホテルと改札と花子さん(後編)>>
コメント
いいですね★
会話をちゃんと覚えていてくれるのは嬉しいですよねo(^-^)o旬のものを天ぷらにしていただくってとっても贅沢な感じがしますねぇ。
【2008/08/18 22:48】 URL | びびっと [ 編集] | page top↑
>びびっとさん
ちょっとしたことなんですが、覚えていてくれるのって、妙に嬉しいですよね。この時期はまだ付き合ってなかったですし、花子さんが僕を見ていてくれたんだなぁと思えたので、特に嬉しかったです。

旬の物を食べるっていうのは、風情があっていいものですよね。
【2008/08/19 08:52】 URL | 小太郎 [ 編集] | page top↑
新橋・天ぷらって言ったら、つな八かな?
などと、ふと思いましたw
でも、近くまで来てくれたり、前の会話覚えてて予約まで入れてくれたり気配りされると、嬉しくて疲れもすっ飛びそうです。
【2008/08/19 16:32】 URL | タイガ [ 編集] | page top↑
>タイガさん
うーん…。お店の名前、覚えられないタイプなので、このときの店名もやっぱり思い出せないのです。行けばわかるんですが…。

お店選びを花子さん任せにしているとこういうことになるので、ダメですよね(笑)

ちょっとしたことなんですが、覚えていてくれるというのは、ものすごく嬉しいですし、幸せなことですよね。僕も彼女のことをちゃんと覚えていないとなぁと思いました。
【2008/08/21 12:51】 URL | 小太郎 [ 編集] | page top↑
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