第80話 就職できた人とできなかった人
【カテゴリ:微妙な付き合い 】   




必死でブース展示をしていたら、いつの間にか、お昼も過ぎておりまして。

やっぱり、昼ごはんを食べに行く時間は無く…。

ずっと、説明やパンフレット配りを続けておりました。

すると、ある人が親しげに話しかけてきましてね。

ある人 「小太郎(苗字で言ってます)、久しぶり」

と、

僕はてっきり、お客さんだと思って接していましたし、もう人の顔を区別して話をしている状況でもない感じでしたので、

最初は気がつかなかったのですが、声をかけてきたのは僕の大学時代に、同じゼミだった友人でした。

大きなゼミだったので、同期の人数も多く、彼は、僕が親しかった友達とは少し距離があったのですが、それでも一緒に過ごした友人でしたので、よく知っています。

とりあえず、木戸君としておきますが、その彼が、スーツを着て立っていたのでした。

僕は、他のお客さんの相手をしていたので、すぐには話が出来なかったのですが、彼は待っていてくれましてね。

お客さんが途切れたところで話をしました。

僕 「久しぶり。今日は、どうしたの?」

木戸君 「一応、会社の仕事だよ。うち(の会社)もあっちにブース出してるから、それを見るだけは見て来いって上司に言われてさ。で、休日出勤。でも、半分サボりだけどな」

といって笑っている木戸君。

僕 「そうなんだ…」

”会社の仕事”というキーワードがグサリと僕に突き刺さったのは言うまでもありませんでした。

同じゼミに居て、同じように卒業した友人は、ちゃんと就職して仕事をしている。

そのことを改めて認識しましたので…。

彼に会ったことで一気に僕の気持ちは沈んでいきました。

木戸君 「それにしても、小太郎が、こんなところでブース出してるとは思わなかったよ」

と、木戸君はかなり驚いている様子。

僕 「そう?」

木戸君 「元気にやってるみたいだな」

実際、それほど元気でもなければ、先行きが明るいわけでもないんですが、

こういうところに出て、何がしかのアクションをしているというのは、

僕の就職がうまく行かなかったことを知っている彼としては、良かったと思ったようです。

僕 「うん、まあね…」

僕としては、色々な事情があってうまく行ってないという気持ちのほうが大きかったのですが、そんなややこしい状況を説明するつもりにもならず…。

親しい友人には僕の状況は話していましたが、木戸君には卒業後に連絡を取ったこともなかったくらいの関係でしたから、そういう意味でも、ちゃんと言おうとはあまり思いませんでした。

それに、目の前に居るのは、しっかり就職して、仕事としてここに来ている友人。

僕にはそんな仕事は無い。

それだけで、圧倒的な差を感じている僕の気持ちは凹みまくっているわけでして、到底、ちゃんと説明することなど無理なわけです。

なので、薄ら笑いのような、作った笑顔を浮かべながら話をしました。

木戸君 「ここって、補助金で独立したりする人達のブースでしょ? 小太郎、そっちの道に行くんだ。今流行りだし、すごいな」

なんて、言うわけです。

この頃、ソフトバンクとか、楽天とか、ああいうベンチャーから大きくなった会社が注目されていた時期でして、

木戸君は、僕がそういうのを狙っていると思ったようです。

僕 「そうでもないよ」

木戸君 「うまく行ったら、かなり儲かりそうだしさ。そういうのにチャレンジできるのって羨ましいよ」

などと、木戸君は僕を絶賛…。

木戸君の賛辞が大きいほどに、僕の気持ちの凹みも大きくなるわけです。

そして、止めを刺すように木戸君は決定的な一言をさらりと言うのでした。

木戸君 「俺なんて、しがないサラリーマンだからなぁ」

と…。

その、しがないサラリーマンというものにもなれなかった僕にとって、その自虐的な彼の発言は、許しがたいほど腹立たしいものでした。

「お前は十分に幸せだ!」と言ってやりたかったです。

彼に悪気がないのは明らかです。

自嘲気味ではあっても冗談が混ざっているのももちろんわかります。

むしろ、僕のやっていることを高く評価しているから出てきた言葉だというのも理解できるんですが、

それが頭でわかっていても、僕の気持ちはそこに追いつけないのです。

なので僕は、木戸君を遠ざけてしまいました。

僕 「ごめん、ちょっとパンフレット足りなくなりそうだから、お客さん来ない間に印刷して来たいんだ。俺、一人でやってるから。悪い」

木戸君 「いや、邪魔して悪かった。頑張れよ」

僕 「うん。会えて良かった」

本当は会いたくなかったんですけどね…。

本物の社交辞令です。

木戸君 「俺も。じゃあ」

といって、木戸君は、パンフレットを一枚手にして去っていきました。

それを見送ってから、僕も、パンフレットの印刷に向かったのでした。

本当にパンフレットがなくなってきていましたけれども、木戸君とそれ以上話をしたくないために、そうしたような気もします。

そんな自分の態度も含め、とても気分の優れない出来事でした。


それにしても、この頃は、友達も寄せ付けないところがあった僕でして、今思うと何を考えていたのかと、自分に腹が立つくらいなんですが、

やっぱり、ちゃんと就職できた友達に対しても、大きな劣等感を感じていましてね。

それが、こんな反応につながっていたのでした。





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【2008/08/01 16:30】 | 微妙な付き合い | トラックバック(0) | コメント(3) | page top↑
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コメント
事情を知らない人からの何気ないひとことで傷つくことってありますね。
僕も、今はフリーランスでやっていますので
会社勤めの人からは時に羨ましがられたりしますけど
実際は常に仕事を切られる不安と戦いながらの毎日ですから
そんなに気楽でもないんです。
それでも自分で選んだ道ですから自信を持ってやってますけどね(^^)

その時の小太郎さんは自信がなかったというのもあるでしょうから
その人の言葉はホントに辛かったでしょうね。
【2008/08/03 09:19】 URL | アポ郎♂ [ 編集] | page top↑
そういう時ありますよね・・・・

何気ない一言グサリとくるとき・・・

でもこれって自分側の感情だから、どうしょうもない気がする。

うまく行ってないときは変なプライドが出てきてそしてコンプレックスを感じてしまう。
落ち込んでるときは、特にそうではないでしょうか。僕は今まさにその状況です。

うまくいってる(自分にはそう見える)には、わかってもらえないコノキモチ。
そう感じてるうちは落ちまくりです。
表面にはださなくても・・・・。

う〜ん色々考えさせられました。
【2008/08/03 21:23】 URL | スリムなドラえもん [ 編集] | page top↑
>アポ郎♂さん
一人だと、気楽でしょうっていうのは、このときの僕も、周りからかなり言われていました。気楽どころか、その後の目処も立たないのに…って説明したいくらいでしたが、言ったところで、立場が違うので、本当の意味では、気持ちはわかってはもらえないんですよね。
もちろん、会社の中で働くことにも一人でやっていることとは違った不安などがあるとは思いますが、両方を経験してみますと、僕としては会社のほうが精神的には安定して、不安も少なく居られる気がします。
どちらだったにしても、自信を持って、一生懸命にやるというのが、やっぱり一番大切なことなのですよね。おっしゃるとおり、このときは本当に自信がなかった僕ですから、それも余計に言葉を痛く感じた要因だったのかもしれませんよね。



>スリムなドラえもんさん
そうなんですよね。
言っているほうとしては、軽い言葉だったり、褒めているとか、本気でこちらを羨ましいと思っているようなので、悪意も何もないのですが、それでも僕としては、そのことで悩んでいるのにっていう、どこにもぶつけようの無い辛さってありますよね。

それに、おっしゃるとおり、落ち込んでいるときは特に痛く感じます。調子が良いときは、軽く流せるはずのことが大きく引っかかったりしますし…。
ドラマなんかですと、こういう場合、「ほっといてくれ!」とか、言って切れてるのとか、見ますけれども、実際には相手にとっては理不尽なことですから、そういう状況で切れちゃうわけにも行かないんですよね。そういうことをもしも言えたなら、少しは楽なのかもしれませんが…。
こういう状況って本当に辛いものですよね。


【2008/08/04 23:48】 URL | 小太郎 [ 編集] | page top↑
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