第76話 補助金仲間との話
【カテゴリ:微妙な付き合い 】   




石田さんに起業の話題をふられた僕。

でも 僕の頭には、起業しようという気持ちはないわけですし、酔っている村上さんに付き合ってロビーに居るだけですので、今、その話をされるとは思っておらず…。

懇親会の会場から出たときに、そういう話からも遠ざかったと勝手に安心していた僕です。

ですが、考えてみたら、石田さんも同じように補助金をもらっているわけですし、そこに関心がいくのは当然なのでして…。

そのことに全く思い至っていなかった僕は、はっきり言って油断していたわけでして、かなり動揺したのでした。

でも、そんなこととは思ってない石田さんは普通に話を続けます。

石田さん 「○○さん(僕が一緒に朝食を食べた補助金仲間の男性)に聞いたんですけど、すごいですよね!」

なんていわれてしまいまして…。

すでに僕が、どこかの企業と仕事の提携話をしているということになっていたのでした。

しかもその話が広がってる…。

でも、朝に話をした補助金仲間にはきちんと説明せず、誤解も解かなかったのに、ここで石田さんの誤解を解いたら、整合性がとれなくなるのは目に見えていましたので、

僕 「あ、いえ、そんなにすごくもないんですが…」

なんて感じで、あいまいに誤魔化す以外になくなってしまったわけなんです。

僕は、いたる所で嘘をついているような気がして、なんとも気が重かったのでした。

石田さん 「うちらなんて、そういう話一つも無いですから。ていうか、もの(作っているシステム)も、まだバグ(動作不良)だらけですから、仕方ないですけど…」

僕 「それだけ、すごいものを作られているってことだと思います」

石田さん 「そうだと良いんですが…」

僕 「報告会でも聞いてましたが、実装(システムを作ること)も終わってるみたいですし、後は運用だけですよね?」

と、僕が彼女たちの作っているものについて知ってる限りのことを言って、話をそちらにもって行こうと頑張りまして…。

でも、実際のコンピュータシステムって、作ってから運用してみて不具合(思ったように動かない状態)が出ることってかなり多いんです。

なので、運用を軽視するような僕の発言って、はっきり言って甘いんです。

甘いのをわかっていながらも、そうでも言わないと、僕の起業の話に話題が戻ってきちゃいそうでしたので、必死だったわけでして…。

なんとも情けない逃げ方をしている僕でした。

システムの運用のことって、開発なんかの仕事をされてる方はわかるかと思うのですが、

わからない方は、銀行のシステムトラブルとかのことをイメージしていただければと思います。

みずほとか、東京三菱UFJとか、統合したときに、ATMが使えないとか、振込み作業ができなくなったとか、そういうニュースありましたよね?

ああいうのが、運用してみて失敗した例です。

あんな感じで規模が大きくなればなるほど大騒ぎになるので、運用して安定して動くかどうか?ということには、かなり気をつけるべきですし、

ああいう大手のところが、莫大なお金をかけて開発しても、実際に運用してみると悪いところがでてくることがあるわけですね。

ですので、僕らのようなシステム開発屋さんは、運用したあとにうまくいかないことがあるというのも、必ず想定しているわけです。

なので、

石田さん 「でも、動かしてみないとなんとも…。展示してても、いつバグる(まともに動かなくなる)のかとドキドキですよ」

なんて、言って石田さんは苦笑してましてね。

僕 「それは、僕も似たようなものです」

という感じで、共感できる話になったわけです。

石田さん 「みんな、ギリギリでやってきてるんですよね。やっぱりこの懇親会、邪魔だわ」

僕 「そうかもしれないですね」

と、二人でちょっと疲れた感じで笑いあったのでした。


それからしばらく、僕は石田さんと、何気ない話をして、過ごしました。

その間は、僕の起業について触れられることはなく、なんとか乗り切りまして。


そのうち、懇親会の会場の扉が開きましてね。

人がたくさん出てきました。

懇親会が終わったようです。

会場内にまだ残って話をしている人も多かったですが、帰る人もたくさん居ましたので、僕らもその場を離れようかということになったのでした。

石田さん 「そろそろ帰っていいみたいですね」

僕 「そうですね」

石田さん 「村上(本当は下の名前で呼んでます)、起きて。帰るよ」

と、石田さんが、すでにぐったりしている村上さんに声をかけていました。

僕 「このコップ、片付けてきます」

僕は、ホテルの方が気を利かせて持ってきてくれた水の入ったコップを片付けることにしました。

村上さんが酔って、足がふらついてましたから、部屋まで連れて行くのに、石田さん一人に任せるのもちょっと気が引けたんですが、

特に親しくも無いのに、女性の部屋までついていくのもなんだか迷惑に思われるような気がしましたので、理由をつけて二人と別れることにしたのでした。

さすがに村上さん一人でしたら、送っていったのではないかと思いますが、石田さんが居るので、なんとか大丈夫だろうと思うことにしまして。

なんとも、腰抜けな発想で情けないんですが…。

それでも、

石田さん 「村上のこと、わざわざ、ありがとうございます。すみませんが、コップお願いします」

と、僕の意図にはあまり気がついてないらしい石田さんにお礼を言われてしまいまして、なんだか罪悪感が残ったのでした。

僕 「いえ、気にしないでください」

といって、コップを持ってその場を離れようとしたんですけれども、

石田さん 「あの…、名刺交換くらいはしませんか? 一応、懇親会でしたし…」

と苦笑気味にいわれまして…。

石田さんなりに、懇親会の主催者の方に対する、義理みたいなものは感じてたみたいでした。

僕 「あ、はい、そうですね」

と、僕も苦笑しながら、名刺を交換しました。

これで、なんとなく、僕も懇親会にちゃんと参加して、人脈を増やしたという気分にだけはなれたのでした。

石田さん 「ありがとうございます。明日、また会場で」

僕 「こちらこそ、ありがとうございます。また明日、よろしくお願いします」

という感じで、今度こそ、お二人と別れたのでした。

別れ際に、一緒に歩いていくお二人の姿を見ていたら、村上さんの足取りもかなりしっかりしてきていましたので、良かったなぁと思いつつ、

二人で力を合わせて仕事をしていること、そういう仕事仲間が居ることをとても羨ましく思いました。

お二人を見送ったところで、従業員の方にお礼を言ってコップを返しまして、僕も自分の部屋に帰ったのでした。





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【2008/07/17 13:00】 | 微妙な付き合い | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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